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視界一杯に広がる、星空を眺めながら思う。
この世界は、どの様な形をしているのだろうと。
少年は、剣を携えながら、星空の草原を歩いていた。
切り傷の様なもので服をぼろぼろにしたその少年の傍らには、更に幼き少女。
少年の小さな手に繋がれた少女の手は、殊更に小さい。
少女の服は少年と同じく所々破けていて、少女の瞳が涙で濡れる度に、
少年は肩を抱いて少女の瞳に溢れる涙を拭い、収めようとするが、
涙は一向に勢いを留める気配を見せない。
少年
「泣くな、レミ────泣かないでくれ」
少年は少女に言い聞かせるも、
レミと呼ばれた少女……レミウスが、その言葉に従う事はない。
きっと、言う事を聞こうと思っても出来ないのだ。
これまで二人を包んでいた、暖かな世界は一夜にして消えてしまったから。
だから俺だって、今夜ぐらいレミウスを思うがままにしておいてやりたい……
しかし、泣いていては、この何も無い荒野の中を逃げ切る事は出来ない様な気がしていた。
少年
「…………歩こう、レミ」
どうしていいのか、少年自身にもついにわからなくなって。
慌てて口を付いて出た言葉は、ソレだった。
レミウス
「ぐす…………歩くの?」
しかし、何か思うところがあったのか。
その少年の言葉でレミウスは泣くのを止めて、自身の泣き顔を月明かりの下へと照らした。
少年
「…………ああ。
いつもみたいに、楽しくお話でもしながら、歩こう」
レミウス
「ぐすっ───どこへ?」
少年
「…………向こう、へ」
レミウス
「向こうって?」
まるで、何から何まで出任せだった。
だから『向こう』がどこかなんて、少年にだって判らない。
しかし言葉は、不思議と口を付いて出た。
少年
「向こうには、楽しい事が沢山待ってるんだ」
レミウス
「たのしいこと?」
少年
「ああ」
レミウス
「向こうに歩くと、楽しい事がたくさんあるの?」
少年
「そうだよ。向こうには…………」
気付けば、指差した先からは、夜の闇を朝日が払拭しようとしていた。
明るくなる視界とは逆さまに、形容し難い気持ちが少年の胸を覆う。
子供としての規則正しい生活を送ってきた少年は、この様な時間に外出して歩いている事なんて、これが初めての経験だった。
いつか、大人になって、両親にも自立を認められて、
自由の生活の上でこんな時間を過ごすものだと思っていた。
しかし、それでも朝日は朝日だ。
好き嫌いに構わず、一日は始まってゆく。
これから明ける、今日という日にも、楽しい事はきっとある。
だから朝日の差してきた向こうを指を刺して、レミウスに言った。
少年
「きっと僕らが歩くその先には、光に満ちた素晴らしい世界が広がっているんだ」
Wonderful World
───The World Of Darkness
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